就労継続支援B型の報酬改定、何がどう変わるのか
―「高くなりすぎた区分」と「新規参入」への調整―
令和8年度に向けて、就労継続支援B型の報酬体系に重要な見直しが行われます。今回の改定は、単なる「報酬を下げる話」ではありません。
- なぜ区分が上がりすぎたのか
- どこが是正されるのか
- 既存事業所と新規事業所で何が違うのか
制度の背景を知らないと、誤解や不安だけが先行しやすい改定です。まずは全体像から整理していきましょう。
今回のB型報酬見直しのポイントは2つ
令和8年度に向けた就労継続支援B型の報酬見直しは、大きく分けて次の2点が柱です。
- 令和6年度改定後に起きた「報酬区分の高騰」の是正
- 収支差率が高い中での「新規参入事業所」への対応
① 基本報酬区分の基準額引き上げ(全事業所向け)
なぜ見直しが必要になったのか?
令和6年度の報酬改定では、利用日数の少ない利用者も受け入れている事業所に配慮するため、「平均工賃月額」の算出方法が変更されました。
算定方法の変更点
変更前
・分母:工賃支払対象者数
変更後
・分母:1日当たりの平均利用者数
この見直し自体は制度理念として妥当なものでした。しかし――
想定外に起きたこと
算出式が変わったことで、実際の工賃支払能力は変わっていないにも関わらず、計算上の平均工賃月額だけが上昇する現象が全国的に発生しました。
- 全国平均で約6,000円工賃が上がったように見える
- 「1万5千円未満」の区分が減少
- 「1万5千円以上」の高い報酬区分が想定以上に増加
👉 制度設計上の歪みが生じてしまったのです。
今回の見直し内容(基準額の引き上げ)
この偏りを是正するため、基本報酬区分の基準額そのものを引き上げる対応が取られます。
引き上げ幅
平均工賃上昇分:約6,000円の半分にあたる約3,000円を基準額に反映
具体例:区分一の場合
- 現行:平均工賃4万5千円以上
- 見直し後:平均工賃4万8千円以上
つまり、「令和6年度改定で見かけ上上がった分を、半分だけ調整する」という位置づけです。
② 事業所への配慮措置(激変緩和)
「いきなり区分が下がって経営に影響が出る」事態を避けるため、複数の激変緩和措置が設けられています。
見直し対象外となる事業所
- 令和6年度改定の前後で報酬区分が上がっていない事業所は対象外
中間的な区分の新設
- 区分が下がる場合でも基本報酬の減少は約3%程度まで
- そのため「区分A」「区分B」「区分C」などの中間区分を新設
下位区分は据え置き
- 令和6年度改定ですでに単価が下がった区分七・区分八
- この間の基準額は今回引き上げなし
👉 急激な経営悪化を防ぐ設計です。

③ 新規事業所への応急的な報酬単価(新規のみ)
就労継続支援B型は、収支差率が高く事業所数も急増しているため、制度の持続可能性を守る応急的な措置として、新規参入事業所のみ報酬単価の調整が行われます。
対象となる事業所
- 令和8年6月1日以降に新規指定されるB型事業所
- ※ 既存事業所には影響しません
内容
- 基本報酬単価を▲1%強〜▲3%弱程度引き下げ
- 令和9年度の次期報酬改定までの暫定措置
👉 「簡単・高収益」を前提とした安易な参入を抑制する狙いです。
施行時期
これらの見直しは令和8年(2026年)6月施行予定です。
最後に|この改定が意味するもの
今回のB型報酬見直しは、真面目に工賃向上に取り組んできた事業所を締め付けるための改定ではありません。一方で、制度の歪みを利用する運営や「まずは儲かるから始める」参入には、確実にブレーキがかかります。
これからの就労継続支援B型は、
理念/支援内容/数字(工賃・報酬)
この3つが揃って、はじめて成立する
そんなフェーズに入ったと言えるでしょう。


