個別支援計画の要件を理解して減算を防ごう

個別支援計画は「作っただけ」では足りません――法的基準、未作成減算、署名・押印の関係を整理する

障害児通所支援の現場では、個別支援計画の作成は日常業務として定着しています。しかし、運営指導や監査の場面では、単に計画書の様式が存在するだけでは足りず、アセスメント、会議、説明、同意、交付、モニタリングまで含めた一連の流れが適切に行われているかが確認されます。特に障害福祉事業より、児童福祉事業は保護者の方から、個別支援計画やモニタリングが適切に行われていないのでは?と不安を持たれる可能性も高い事業です。適切に説明、同意、文章の交付が行われているかチェックする体制つくりが大切です。

特に近年は、「押印がないから直ちに無効」という単純な整理ではなく、実質的な説明・同意の有無と、それを確認できる証跡があるかが重視される傾向にあります。[e-Gov 法令検索][厚生労働省

個別支援計画の法的基準

個別支援計画については、「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」第27条に、児童発達支援管理責任者が行うべき手順が定められています。具体的には、①アセスメント、②保護者・障害児との面接、③計画原案の作成、④担当者会議の開催、⑤保護者等への説明、⑥文書による同意の取得、⑦計画書の交付、⑧モニタリングと見直し、という流れです。放課後等デイサービスについても、この個別支援計画作成の考え方は第71条の6で準用されています。[e-Gov 法令検索

つまり、法令が求めているのは「計画書という紙を作ること」だけではありません。計画作成に至る過程と、作成後の見直しまで含めて適切であることが求められています。実務上よく見落とされるのは、会議を開いた記録がない、説明した記録が薄い、同意取得の時期が曖昧、交付記録が残っていない、モニタリング記録がない、といった部分です。[e-Gov 法令検索][岐阜県資料

未作成減算は「計画書がない場合」だけではない

「個別支援計画未作成減算」という名称から、計画書そのものが存在しない場合だけが対象だと思われがちです。しかし実務上はそれより広く、計画作成に係る一連の業務が適切に行われていない場合も減算対象になり得ます。岐阜県の集団指導資料でも、児童発達支援管理責任者の署名がない、利用者・家族への説明や交付をしていない、利用者の確認・同意を得ていない、アセスメントやモニタリングが行われていない、記録が整備されていない、といった欠缺が主な指摘事項として整理されています。[岐阜県資料

また同資料では、個別支援計画が作成されていない、または作成に係る一連の業務が適切に行われていない場合、適用月から2か月目までは所定単位数の100分の70で算定(30%減算)、3か月目以降は100分の50で算定(50%減算)すると示されています。現場としては「計画書のファイルがあるから大丈夫」ではなく、計画作成プロセスの各工程を証明できるかまで意識する必要があります。[岐阜県資料

署名・押印がないと直ちに未作成なのか

ここは誤解が多いポイントです。結論からいえば、署名・押印がないことだけで直ちに「未作成」と決めつけるのは慎重であるべきです。現在の行政実務では押印絶対主義は後退しており、厚生労働省のQ&Aでも、電磁的方法による同意の例として電子メールによる同意の意思表示が挙げられています。つまり、同意の確認手段は、必ずしも従来型の押印だけに限られません。[厚生労働省

ただし、ここを過度に楽観視するのも危険です。基準上は今もなお、保護者等に説明し、文書により同意を得ることが求められています。そのため、「押印がいらない」ことと、「記録がなくてもよい」ことは全く別です。署名や押印がなければ即アウトとは限らないものの、説明・同意・交付の事実を確認できる証跡が弱い場合には、未作成減算のリスクが高まると考えるべきです。[e-Gov 法令検索][厚生労働省

押印廃止の流れと実務で残すべき証跡

こども家庭庁の参考様式では、保護者確認欄に「保護者署名」と記載され、その下に「押印廃止」と明記されています。これは、少なくとも参考様式レベルでは、押印ではなく署名による確認へ軸足が移っていることを示しています。[こども家庭庁

そのため、事業所として本当に重要なのは、ハンコの有無だけを気にすることではなく、「いつ、誰に、何を説明し、どう同意を得て、いつ交付したか」が後から追える状態を作ることです。署名欄、交付日、説明者名、面談記録、担当者会議記録、メール履歴、送付記録など、複数の証跡を重ねて残しておくことで、形式だけでなく実体のある運営であることを示しやすくなります。[こども家庭庁][厚生労働省

実地指導で見られやすい「危ないパターン」

現場で特に注意したいのは、計画書の有無そのものより、手順の抜け落ちです。たとえば、アセスメントを後付けで整えている、担当者会議を実施したのに議事録がない、説明はしたが同意取得日が空欄、交付したが控えや送付記録がない、半年ごとの見直しが形骸化している、といったケースです。こうした状態は、「計画が存在するか」よりも、適切に作成・運用されているかという観点から問題視されやすいです。[岐阜県資料][e-Gov 法令検索

また、児童発達支援管理責任者の署名や関与が弱い場合も見落とせません。岐阜県資料では、児童発達支援管理責任者の署名欠如も指摘事項として挙げられています。保護者署名ばかりに意識が向きがちですが、計画作成責任者としての児発管の関与が読み取れることも、実地指導対応上は非常に重要です。[岐阜県資料

事業所として今すぐ見直したい実務ポイント

今後の実務としては、個別支援計画を「様式管理」ではなく「工程管理」で見直すことが重要です。計画書のひな型だけを整えるのではなく、アセスメント実施日、面接日、担当者会議日、説明日、同意取得日、交付日、モニタリング日が一目で追える運用に変えることで、未作成減算リスクは大きく下がります。[e-Gov 法令検索][岐阜県資料

  • アセスメント実施日と面接記録を必ず残す
  • 担当者会議の開催日・参加者・意見を議事録化する
  • 説明日、同意取得日、交付日を計画書または管理台帳で一元管理する
  • 保護者署名の有無だけでなく、説明と同意の経緯が追える記録を残す
  • メール同意を用いる場合は、日時・相手・対象計画が特定できる形で保存する
  • 半年ごとのモニタリングと見直し記録をルーチン化する

行政指導を受けたときの基本姿勢

もし行政から口頭で「未作成減算に当たる」「過誤調整が必要」といった指導を受けた場合は、感情的に反発する前に、何が問題とされているのかを具体的に書面で確認することが重要です。総務省の行政手続法FAQでは、口頭の行政指導について相手方が求めた場合、原則として行政庁は「趣旨」「内容」「責任者」を記載した書面を交付すべきとされています。さらに、権限行使が示唆される場合には、その根拠条項の提示を求めることもできます。[総務省

つまり事業所側としては、「署名がないからダメと言われた」で止まるのではなく、どの工程が、どの基準に照らして、どのように不足と評価されたのかを丁寧に確認することが大切です。これにより、単なる書類不備なのか、未作成減算相当とまでいえるのか、改善指導で足りるのかが見えやすくなります。[総務省][岐阜県資料

まとめ

個別支援計画で本当に大切なのは、署名や押印という「形式」だけではありません。法令と実務が求めているのは、アセスメントから説明・同意・交付・モニタリングまでが一貫して行われ、その証跡が残っていることです。押印廃止の流れはある一方で、説明・同意・交付の確認が不要になったわけではありません。だからこそ、事業所は「ハンコがあるか」ではなく、支援の実体と運営の記録が残っているかという視点で、日々の計画作成を見直す必要があります。[e-Gov 法令検索][厚生労働省][こども家庭庁


※本記事は、障害児通所支援における個別支援計画の一般的な法令・実務上の留意点を整理したものです。具体的な事案については、自治体の運用、指導通知、個別事情により評価が分かれることがあります。必要に応じて、所管行政庁や専門家へご確認ください。

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