【就労継続支援B型】施設外就労のメリット・デメリット

就労継続支援B型・運営実務

施設外就労は本当に“美味しい”の?メリット・配置の注意点・目標工賃達成指導員配置加算との関係、そして「下見」の大切さ

施設外就労は、工賃向上や社会参加のきっかけとして、とても魅力的に見える仕組みです。けれど実際には、人員配置実地指導で見られるポイント、そして何より利用者さんが安心して働ける環境かどうかまで、丁寧に見ていく必要があります。この記事では、制度の要件だけでなく、現場で本当に大切にしたい視点もあわせて、やさしく整理してみます。

この記事でわかること

  • 施設外就労のメリットと、見落としやすい注意点
  • 人員配置で気をつけたいポイント
  • 目標工賃達成指導員配置加算との関係
  • 契約前に必ず行いたい「現地下見」の視点

1.そもそも「施設外就労」と「施設外支援」は別のものです

まず最初に、よく混同されやすいのが「施設外就労」「施設外支援」の違いです。

厚生労働省の通知では、施設外就労は、事業所が企業等から請負契約で作業を受け、利用者さんと職員がその企業へ出向いて作業を行う形として整理されています。一方で、施設外支援は、個別の利用者さんに対して、事業所外で支援を行う枠組みです。似ているようで制度上は別の扱いになるため、実務ではここをきちんと分けて考えることが大切です。[厚生労働省通知]

ポイント
この記事では、事業所単位で外部の企業へ出向いて作業を行う「施設外就労」について書いています。

2.施設外就労の魅力はたしかにあります

(1)工賃向上や一般就労への意欲につながりやすい

施設外就労のよいところは、利用者さんが企業の中という“実際の仕事の場”に触れられることです。施設内だけでは得にくい緊張感や仕事の流れを体験できるので、働くイメージがぐっと具体的になります。

厚生労働省も、施設外就労について、一般就労への移行や工賃・賃金の向上を図るうえで有用と示しています。実際、請負単価の設定次第では、施設内作業より工賃アップにつながることもあります。[厚生労働省Q&A]

(2)事業所運営の幅が広がる

施設外就労をうまく活用できれば、事業所の中だけで完結しない支援がしやすくなります。地域の企業とのつながりができたり、新しい仕事の受注につながったりすることもあり、運営面では大きな可能性があります。

ただし、ここで気をつけたいのは、制度上の要件を守ったうえで進める必要があるという点です。厚生労働省通知でも、施設外就労の総数は利用定員を超えないことなどが明記されています。[厚生労働省通知]

(3)地域とのつながりが生まれやすい

施設外就労は、単なる作業の場づくりではなく、地域との接点をつくる機会にもなります。企業の方に事業所や利用者さんのことを知ってもらえることで、将来的な仕事の広がりや理解促進にもつながっていきます。

3.でも今は「やれば加算がつく」仕組みではありません

ここは、誤解されやすいところかもしれません。

施設外就労加算は、令和3年度改定で廃止されています。つまり、現在は「施設外就労をしたから直接加算がつく」わけではないのです。さらに令和6年度改定では、自治体への実績報告書の提出義務も見直されました。[厚生労働省資料]

ただし、提出義務がなくなったからといって、記録を残さなくてよいわけではありません。実績記録書類の作成や保管は引き続き大切です。あとから説明できる状態にしておくことは、運営上とても重要です。[厚生労働省資料]

注意しておきたいこと
今の施設外就労は、「加算目当てで導入する」というよりも、工賃向上や支援の質向上に本当に結びつくかを見ながら考える時代になっています。

4.人員配置は“数字が合えばいい”ではありません

(1)外に出る利用者数に応じて、必要な職員配置が求められます

厚生労働省通知では、施設外就労を行う日に、その利用者数に対して報酬算定上必要とされる人数の職員を配置することが求められています。ここは常勤換算の考え方も含むため、感覚で運用すると危険です。[厚生労働省通知]

(2)でも本当に大切なのは、現場で支援が成り立つこと

施設外就労に随行する支援員には、単にその場にいればよいわけではなく、利用者さんの作業状況の把握、企業との調整、作業指導、必要時の連絡や家族との連携など、いろいろな役割があります。つまり、帳簿上の人数合わせだけでは足りず、実際に支援できる体制かどうかが問われます。[厚生労働省通知]

(3) 随行職員の人数は「常勤換算 × 配置区分」で計算

仙台市が公表する集団指導資料では、以下のように明示されています。

人員配置区分6:1のB型事業所の場合、施設外就労に行った利用者が1~6人 → 生活支援員または職業指導員1人、7~12人 → 2人を随行させる必要がある 仙台市資料(PDF)

(4) 「4時間配置」のような計算結果でも、実際は契約時間フルで1名常駐

ここが最大の盲点です。10:1配置・施設外利用者5名のケースを例にとると:

  • 必要職員数:5 ÷ 10 = 0.5人
  • 時間換算:8時間 × 0.5= 4時間  と計算されますが、「4時間だけ随行させればよい」ではありません。常勤換算の計算と「常時1人以上の随行」という運用上の最低ラインは別レイヤーで両方クリアする必要があります。ここを取り違えると、人件費の収支シミュレーションが根本から狂います。

(5)事業所の中の配置も忘れてはいけません

当然ですが、施設外就労に職員が出ていっても、事業所内の支援がなくなるわけではありません。外と中の両方で人を確保することになるため、施設外就労は思った以上に人員面の負担が大きくなりやすいです。

このため、「せっかく仕事があるから」と先に契約を進めてしまうと、あとで配置が苦しくなってしまうことがあります。実務では、受注前に配置シミュレーションをしておくことがとても大切です。

5.目標工賃達成指導員配置加算との関係も見ておきたいところです

施設外就労を考える事業所さんは、同時に工賃向上の体制づくりも意識されていることが多いと思います。その中で気になりやすいのが、目標工賃達成指導員配置加算との関係です。

運営指導でも加算については要件を本当に満たしているのか?厳しくチェックされるところです。

令和6年度改定では、就労継続支援B型に「6:1」の人員配置体系が新設され、さらに目標工賃達成加算(10単位/日)も新設されました。工賃向上を評価する流れが強くなっていることがうかがえます。[厚生労働省資料]

新設の「6:1」報酬体系が登場したことで、目標工賃達成指導員配置加算の要件は次のように再編されました(B型サービス費Ⅰ・Ⅳ算定事業所が対象)

  1. 目標工賃達成指導員を常勤換算で1.0人以上配置
  2. 職業指導員 + 生活支援員の総数が常勤換算 6:1以上
  3. 職業指導員 + 生活支援員 + 目標工賃達成指導員の総数が常勤換算 5:1以上

報酬単価も従来89単位から約半分に引き下げられています。「取れば確実に儲かる加算」という見方は、もはや改めるべきです。

一方で、施設外就労もまた、工賃向上や一般就労への移行に資するものとして位置づけられているため、考え方としてはとても親和性があります。だからこそ、両方をうまく活かしたいと思われる事業所さんも多いはずです。[厚生労働省Q&A]

ただ、実際には人員配置がよりシビアになる可能性があります。施設外就労先にも人が必要で、事業所内にも人が必要で、さらに工賃向上のための体制整備も必要となると、運営としてはかなり綿密な設計が求められます。

目標工賃達成指導員は施設外就労の”随行カウント”に含まれない

ここが施設外就労 × 目標工賃達成指導員配置加算の最大の論点です。仙台市資料は次のように明記しています。

施設外就労先では、人員配置基準に応じて、報酬算定上必要とされる人数の職員を随行させる必要があります。(サービス管理責任者、賃金向上達成指導員や目標工賃達成指導員は含まれません。) 仙台市資料(PDF)

やさしく言い換えると…
施設外就労と工賃向上の方向性は相性がよいのですが、「理念として相性がよい」ことと「運営として無理なく回る」ことは別ということです。

6.令和7年3月Q&Aで、さらに“実態”が重視されるようになりました

令和7年3月の厚生労働省Q&Aでは、形式的に施設外就労の形を整えていても、実態が伴っていなければ報酬請求できないことが明確に示されました。ここはとても大切なポイントです。[厚生労働省Q&A]

たとえば、自社の建物を委託先に貸して、その場所で作業するケースや、「施設外就労先」と称する別施設を自社で用意して運用するようなケースについては、施設外就労に当たらず、基本報酬を算定できない場合があることが示されています。[厚生労働省Q&A]

つまり今は、「契約書があるから大丈夫」ではなく、「本当にその企業の実態があるのか」「本当にその場所で行う合理性があるのか」まで説明できることが求められているということです。

7.いちばん大切なのは、利用者さんを守れる環境かどうかです

ここまで制度や配置の話を書いてきましたが、私はやはり、いちばん大事なのはここだと思います。

単に要件を満たすかどうかだけでなく、その施設外就労先が、本当に利用者さんにとって安心して働ける場所かどうか。そこをしっかり見ないまま業務委託を受けてしまうのは、とても危ういことです。

厚生労働省通知でも、施設外就労の算定要件として「緊急時の対応ができること」が示されており、また随行支援員の役割としても、利用者さんの状況把握や必要な支援、企業との調整などが挙げられています。つまり制度そのものが、現場をきちんと見ることを前提にしているとも言えます。[厚生労働省通知]

受託前に、ぜひ現地で見ておきたいこと

  • バリアフリーかどうか(段差、スロープ、手すり、エレベーター)
  • お手洗いは使いやすいか(多目的トイレ、トイレまでの動線、介助のしやすさ)
  • 本当にその作業ができるか(難易度、スピード、危険性、姿勢負担)
  • 暑さ・寒さ対策は十分か(空調、換気、屋外作業時の対策、水分補給、休憩場所)
  • 騒音・におい・粉じんの影響はないか
  • 事業所から遠すぎないか(送迎時間、悪天候時の移動、安全な導線)
  • 緊急時の対応が現実的にできるか(避難経路、AED、最寄り医療機関、連絡体制)
  • 職場の雰囲気は安心できるか(障害理解、声かけ、ハラスメント防止)

とくに、お手洗いや休憩スペース、動線の確認は見落とされやすいのですが、利用者さんにとってはとても大切です。作業そのものはできても、トイレが使いづらい、休む場所がない、暑さ寒さが厳しい、移動が負担になる――そんな理由で継続が難しくなることは十分にあります。

だからこそ、契約前の下見は“形式的な視察”ではなく、“利用者さんを守るための確認”として行う必要があると思います。

8.進めるときは、こんな流れで確認しておくと安心です

  1. 指定権者へ事前相談する
  2. 現地下見を行う
  3. 個別支援計画に位置づける
  4. 業務委託契約を締結する
  5. 必要な人員配置を確認する
  6. 開始後もモニタリングを行う
  7. 記録をきちんと残して保管する

令和6年度改定で提出義務が見直されたあとも、「説明できる運営」であることは変わりません。書類、記録、現場の確認、この3つを揃えておくことが大切です。[厚生労働省資料]

9.まとめ

施設外就労は、工賃向上や一般就労への移行を後押しできる、とても意義のある仕組みです。けれど、今はもう「制度上できるから進める」だけでは足りません。

人員配置が無理なく組めるか。
委託先に実態があるか。
そして何より、利用者さんが安心して働ける場所か。

この3つを丁寧に見ていくことが、本当に大切なのだと思います。

バリアフリーやお手洗い、暑さ寒さ対策、作業内容、距離、緊急時対応まで、しっかり下見をしてから業務委託を受けることは、利用者さんを守るためにも、事業所自身を守るためにも必要です。施設外就労を取り入れるなら、ぜひ“利用者本位”の視点を真ん中に置いて進めていきたいですね。

施設外就労を始める前に、まずは「下見チェックリスト」をつくってみませんか?

制度の要件だけでなく、利用者さんが安心して働ける環境かどうかを確認するための視点を、事前に整理しておくと安心です。

開業予定の方は、最初から無理をして施設外就労の案件を取ってくるよりも、まずは事業所内での支援体制を固め、1年目の工賃実績を地道に上げていくことを目標に運営されることをお勧めします。

一方で、すでに運営されていて『平均利用者数が15名を超えてきた』『人員配置にある程度余裕がでてきた』という事業所様は、次のステップとして施設外就労をぜひ積極的に検討してみてください。工賃アップや利用者さんのモチベーション向上に大きくつながるはずです。

参考リンク(一次資料)

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